日本政府と国民への進言
白光誌昭和四十四年六月号発表
日本の現状
沖縄復帰問題と、七〇年安保問題は、日本国内を騒然とゆさぶりつづけているのですが、
のんき
一般国民は意外と思う程、呑気に構えていて、自分たちの生活だけを唯一のものとして、
国事にはあまり関心を持たず、ただその時々の事態において、政府をそしり、全学連の行
動に眉をしかめている、というだけなのであります。
全く、国と個人とが離ればなれになっている状態で、自分たちの国家を、自分たちで護
りつづけていこうという意志が一体あるのだろうか、と思われる程個人主義的であり、利
おか
己主義的であるのです。要は自分たちの生活が何もの何事にも侵されず、無事に過ごして
ゆかれればよい、という願いがあるだけなのです。また保守的な人は、国を憂うる心はあ
りますが、積極的に国家護持の行動を起こす人が少ないのであります。
それにひきかえ、反政府的な革命的な人々は、米国一遍倒の日本政府の転覆を計って、
あらゆる面で、そのことだけにすべてをかけた活動をしているのであります。その中に、
親ソ派の人々も、親中国派の人々も、全学連を手先に使っている革命一本槍の国家破壊主
義者もあるわけで、保守派の人々や一般国民の消極的な態度や、個人主義、利己主義的な
在り方ではとても太刀打ちできぬ烈しい活動力をもっているのです。言
進
日本は現在、世界の中でどんな立場にあるかと申しますと、米国を中心とした自由主義吻
陣営の一員であります。しかも、その工業力においても経済力においても、また国民の知舐
と
能程度においても、アジア堕でありまして、米国が目取も頼みにでき得る国であるのです。鵡
その重要性はベトナムどころの騒ぎではありません。躰
ですから、米国にとって自由主義陣営にとって、日本が自由主義陣営を離れ、共産主義
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陣営にでも走ったら、それこそ大変な脅威になってしまいます。そこで米国は、日本のた
めに今日まで何やかと経済的にも軍事的にも、日本を護りつづけてきているのであります。
敗戦以来二十余年、日本が米国から受けた恩恵は並々ならぬものがあると思います。それ
が、米国自体を護る一つの手段としての援助であったとしても、今日の日本の工業力や経
済力の発展は、米国に負うところが多大であったことを否定することはできません。
もし仮りに日本の占領がソ連によってなされていたとしたら、一体どのようになってい
ほんぼう
たことでありましょう。今日のように自由気ままな、それこそ奔放なまでな自由な生活が
できていたであσ ましょうか。ソ連に占領されていた国々や、共産主義国の実態をみれば、
この差異がよくわかります。国民は軍隊に徴集され、言論は抑圧され、日本の全学連運動
ひつじよう
のような運動をすれば、それこそ、即座に極刑に処せられることは必定です。軍隊は嫌だ
も、自由を縛られたくないもありません。国家権力のおもむくままに、国民は動かねばな
りません。
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共産圏の実体
米帝国主義者とか、日本帝国主義者などといって、日本を左翼化しようとしている人々
は、そういう共産圏の実態を知っているのでしょうか。いちいち国家の権力に反抗する傾
向の人々こそ、真先に血祭りにしてしまうのが、共産主義国のやり方であることを、この
人々は知っているのでありましょうか。かつてのソ連において、共に革命運動を遂行した
同志たちを、実権を握った人々が、次々と処分していったことや、現在の中国が、これも
同じように、昔の友を今日の敵として追い落してしまった事実は、国家権力を護るために
は、いかなる非情も辞さない、という冷酷無比なる在り方でありまして、これが共産主義
を遂行するためには、どうしても通過せねばならぬ関門となるのであります。こうして追
い落される中に、日本の左翼陣営の人々が入らないと、誰が保証できるでしょう。処分さ
れ得る側に入り得る可能性のほうが多いことは、ソ連内部の今日までの在り方、チェコや
その他の社会主義国に対するソ連の身勝手な態度や、中国の今日の造反運動などで、かな
37日本政府と国民への進言
りはっきりわかるのです。
要するに彼らには、自分たちの国家権力に反逆するような傾向を持つ者は、一人もいら
ないのです。したがって、日本なら日本の国家権力に反逆してきた左翼主義者たちが、真
実自分たちの仲間として、一つの政治形態に入ってきた場合は、その人たちの、自己の意
志に反する事柄には、あくまで反抗するという、心の傾向に対して、非常な警戒心をもつ
わけで、自国のため、利するだけ利したら、もうそういう面倒な仲間は不要とされるので
あります。その末はいわずともがなわかりきった結末をたどることになるのです。
ですから、日本に革命を起こして成功した場合、ソ連なり中国なりの指導者は、日本の
革命成功を起点として、日本革命の成功者である左翼主義者は、もう自分たちの味方では
なく、自分たちへの反逆者となる傾向をもつ者たちとして、敵視することになるのであり
ます。
日本の戦国時代の武将たちが、敵方に利益で誘って裏切者をつくり、その裏切者を使っ
て自分たちに有利に事を運ばせ、後にはその裏切者を上手に処分してしまう、という事実
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が多くありました。そういう点に共産主義国のやり方も似通っているのです。
もっとも宗教的な因縁因果、輪廻の法則からいっても、国家を売った者は、やがて自分
も滅びることになるのは当然なことなのですが、国家を売るとは自分では気づかずに、国
家を売っている人々の多いのには、全くやりきれぬ気がするのです。それはあに、共産圏
にのみではなく、米国に対してでも同じことでありまして、叡智の働かぬ在り方は、とも
みずか
するとそういう事態に自らを追いこんでしまうことになるのであります。
日本の一般国民が、もし左翼主義者の煽動に乗って、米国と日本とを引き離すような運
動をしたら、一体どういうことになるでありましょうか。例えていえば、安保条約を破棄言
進
して、自衛隊だけで日本を護るようにした場合。これを、一番喜ぶのは、ソ連中国北鮮と吻
いう、日本周囲の土ハ産主義諸国です。何故かといえば、彼らにとって目の上のこぶは、米鴎
と
国の軍事力なので、その軍事力がなくなったとなれば、それこそ自由自在です。彼ら共産瑚
主義国にとって、日本の国土は、それこそ礁の出る程欲しい国です。日本の工業力を使い、躰
勤勉なる日本人を使ったならば、どれ程生産が増強され、国力が増大されるでしょうか。39
その上韓国をはじめアジア諸国の上に、強大な圧力をかけることができます。どんな手段
をとってでも日本を自分のものにする、という想いはソ連中国北鮮共に非常に強いもので
あるのです。ちなみに「月刊ペン」より次の文章をかりてみましょう。
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元禄気分に浮かれている日本
「月刊ペン」昭和四十四年五月号より
私たちは、ほとんど何も知らずに毎日の生活を送っている。関心事といえば、自分の行
動範囲内のことに限られている。一部の人たちは、日本が今どうなっているかを考え、不
安や緊張や落胆や希望を表明するが、社会の中枢を占める中間層をゆり動かすまでには至っ
ていない。大部分の人は、国防論議よりも税金論議のほうが身近かであるし、繁栄の中で
の安泰な生活を強く望んでいる。
だが、もしひとたび侵略を目的とした他国の軍隊が、この元禄気分に浮かれている日本
に押寄せたらどうなるだろうか。そんな無法はありうべからぬことだと断言できるだろう
か。
共産主義国の目的は明白である。彼らは他の何物よりも「領土」をドン欲にほしがる。
歴史をひもとくまでもない。近くは第二次大戦末期に不可侵条約を一方的に破棄してわが
国の北方領土を持っていってしまった事実がそれである。
あるいは現在紛争中のウスリi川における中ソの、まったく異常としか思えない領土執
着ぶりがそれである。東ベルリンはいうまでもない。彼らは「自分の土地」にするために
は、ほとんど手段を選ばないことが歴史で実証されているのである。彼らの「領土拡張絶
対主義」を認識せずに、国防論というのは成り立たないのである。
わが国には自衛隊がある。その戦力は世界のランキングで五位とも七位ともいわれるが、
しかし、肉眼で見ることができるほど近くに存在する国の戦力には遠く及ばない。もし自
衛隊だけの戦力で立ち向ったとしても、
「荒っぽい推理だが、二十四時間ももたずに木ッ葉みじんだろう。これは核なしミサイ
ルで戦った場合の話で、核が登場すれば三十分以内に日本人は全滅してしまう」(軍事評
41日本政府と国民への進言
論家)
国家予算の八パーセント程度の国防費の実態がこれである。つまり相手がその気になれ
ば、一瞬で踏みつぶされてしまうのである。これでは砂上のマイホーム主義ではないか。
安泰な生活というのは、自らの手で、その安泰を守らなければ維持することはできない。
全世界に対して完全中立を宣言したスイスですら、国家予算の三十三パーセントを国防費
にあて、中立を守らんがために自国を防衛しているのである。
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ずるい日本人
「ずるい日本人」という評論が、このところアメリカやヨーロッパのマスコミに登場し
ている。三月十四日の読売新聞でも獅子文六氏がそれを書いている。これは中国料理店
「留園」の主人公盛さんが他誌に表わしたものを引用し、硬骨の獅子文六氏が痛く恥じて
いるものだが、その主旨は「富国他兵」である。
『日本が軍備はアメリカにおんぶして、金もうけに余念がないのは、第三国人からみて
もみっともない。民族の気骨がむしばまれるというのである。こんな言は日本人の口から
出るのが当然だが、誰も言わない。なぜかタブーになってるらしい』
つまり現在の日本は、他国の兵によって安全を守ってもらいながら、ひたすら金もうけ
に走りまわっているのである。他国から見たら、ずるい日本人という批判をしたくなるの
も無理はない。しかもその上、国防論を語るのをタブーにしている。祖国愛のない民族は
存在しないという定義はあるが、この定義も日本人に関しては怪しくなりつつある。
*
反体制の人間は、ここを先途と安保破棄を叫ぶが、それでは、もし安保がなくなって日
本が丸裸になったとき、現在私たちが得ている繁栄と平和が少しも変わることなく続くと
いう保証を、その人たちはどこで得ているのだろうか。
いまアメリカ国内でも、日米安保のあまりにアメリカ一方的な義務負担に非難の声が起
こっている。なぜアメリカは、そこまで日本に気を使う必要があるのかという社説も登場
している。またアジア諸国、とりわけ準戦時態勢の韓国、国府などは、公式に発言すると
43日本政府と国民への進言
内政干渉になるので慎重だが、七〇年安保を予想以上に重要視している。それらの国々に
とってみれば、日本が丸裸になってしまうことは、アジア集団防衛計画の大きな前提を失っ
てしまう結果になるからである。
この辺でタブーからのがれ、私たちは大きな目で日本の現実と未来を見きわめ、自分た
ちの国は自分たちで守るという鉄則について語り合うべきではないのか。左翼、右翼の判
別をしてよろこんでいる「思想アレルギー時代」から一歩前に出て、私たちの安住の地を
いかにして素晴らしい国に造りあげるかを真剣に考えるときが来ていると思う。
*
「安保が存続しているあいだに、早いところ日本は自衛するのかしないのか決めるべき
だろう。ずるい日本人といわれたついでに、もうしばらく在日米軍に国を守ってもらい、
その間に儲けるだけ儲けてやろうなんていう量見の日本人がいたとしたら、もう終りだ。
日本は守る価値があるからいうのだ。こんなに素晴らしい国はない。だから皆で守るべき
なのだ」(防衛庁記者E氏) 引用終り
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地球を平和にするための責任がある
どうでした。こういう論を読んでみると、日本が現在大変な立場にあることが、おわか
りになると思います。現在の自衛隊だけなら、共産主義国から、着々と彪大な武器をつぎ
こんで、ゲリラ部隊をつくり、国内からと国外からと同時に戦いをはじめたら、日本は一
日にして共産主義国に占領されてしまうでしょう。その時に当って米国軍隊を頼んでも後
の祭で、ベトナム戦争の二の舞がそこに起こり、第三次大戦は日本からはじまってしまう
ことになります。
安保を破棄して、こういうような事態になることは、現在の日本人の保守的な性格から
ほとんどないと思いますが、一般国民があまりに自分たちの生活や遊びにだけ心を奪われ
ていますと、いつの間にか、左翼主義者の実行力の前に膝まついてしまう、ということに
もなりかねます。だからといって、私が再軍備論者というのではありません。私はあくま
で「祈りによる世界平和運動」の提唱者であり、実行者であるのですが、私の申し上げた
45日本政府と国民への進言
いことは、やはり自分たちの国家は自分たちで護らなければならない、ということと、地
球人類の一人一人である私たちは、あくまで、この地球を平和にするための責任をもち、
そのための精進努力をはらわなくてはいけない、ということなのであります。
日本が共産主義国に占領されれば、これは忽ちに米国と共産国との戦争となり、第三次
大戦となるのであって、日本は勿論、地球全体の滅亡は時の問題となるのです。日本はベ
トナムどころではない、韓国どころではない、その重要性において、その在り方いかんに
よって、正に地球世界に完全平和達成のメッカとなるか、地球滅亡の拠点となるか、この
二つの道の一つを取らねばならないのです。これは二つの道のどちらかを取るというので
はなく、絶対に一つの道、世界完全平和達成の道に向かって日本は進まなければならない
のです。
これは何人といえど否定するものはありますまい。米国との安保条約を破棄して、現在
の自衛隊一本でゆけば、前記のようなことになりかねないのですが、また、安保条約を破
棄するかわりに、自衛隊を正式の軍隊にしたらどうか、自分の国は自分たちの力で護る、
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ということに決意して、再軍備に踏みきったらどうか、ということになります。本格的な
軍備となれば、核装備をしないでいても、それは彪大な費用をかけねば、日本周囲の共産
主義国から攻撃意欲を削いでしまう程に強力なものにはなりません。現在でも税金が高い
悪税だとか、賃金が安い、とごとごとに争議をしているような日本国民が、賃金はそう上
がらずに、現在の何倍の税金を払ってまで、再軍備に踏み切れるだろうか、と私は頭をか
しげざるを得ません。真の平和国家になるには軍備はいらぬ、という論とは別に、軍備を
しようにも、国民の心がこう自分勝手な利己主義ぞろいでは、とても強い軍隊はつくれな
い、と私は思うのです。国民の心が、真実に自分たちで国を護るのだ、という気持一つに
結ばれていれば、枝葉の問題でそれぞれの異見はあっても、そういう団結した心は外国に
対する大きな防衛力となるのでありまして、国民の心が自分たちの利害問題を主にして動
いていて、国家を護るという気概が無くては、平和憲法でも、再軍備でも、どちらもただ
単なる空念仏に終わってしまいます。要は国民一般の気構えと、国民の国を護る気骨を持
たせてゆくような政府の政治の在り方が大事なのです。
47日本政府と国民への進言
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自衛隊とソ連、中国、北朝鮮の軍備
ちなみに、日本の自衛隊と、共産圏三国の軍備をここに示して比べてみましょう。
極東のソ連軍の配備は、約二一二万人一七個師団(陸上部隊だけ)海軍は約九百隻、六〇
万トン。このうち潜水艦は九〇隻前後。航空機は約二八〇〇機、このうち五〇〇機が爆撃
機。
このような数字のものが樺太から千島、沿海州、バイカル湖付近までの間に展開してい
ますが、このソ連内には当然中距離弾道弾の基地もあります。
少なくとも極東ソ連領内に日本、中国等をその射程内におさめる地対地ミサイルがある
ことは間違いなく、この日本がソ連の核弾頭つきのミサイルの射程内にあることを、認識
すべきであります。
北鮮は、陸軍の勢力として一八〜九個師団と六個師団とがあり、兵力約三五万五〇〇〇
人。このほかに保安隊が約十万人。海軍は約一四〇隻。潜水艦二隻。航空機は五〇〇機。
中国は、陸軍が一二〇個師団、総兵力約二二〇万人、このほか公安軍として三〇万人。
海軍は八四〇隻。駆逐艦二〇隻前後。潜水艦三四隻。この中にはミサイル発射潜水艦も含
まれています。航空機は五〇〇機、海兵隊二万八〇〇〇人。空軍は第一線機として約二〇
〇〇機、このほか軽爆があります。
日本は、陸上自衛隊が十三師団一五万六〇〇〇人。海上自衛隊は五〇〇隻。潜水艦八隻。言
進
航空自衛隊二〇〇機(戦闘機五三〇、輸送機五〇、練習機三九〇、ヘリ三〇、ナイキ七吻
○)娼・7月現在鴎
紐
政
こんな工合です。日本のほうでは、共産主義諸国に対して、なんの野心もありませんし、躰
敵対感情もありませんが、相手側は野心も充分にあり、敵対感情もあります。とすると、49
日本の今の自衛力など問題でなく日本は相手方三国に同時に対せる程の軍備がなければな
りません。それこそ、今のような甘っちょろい国民感情では、とても現在の自衛隊に毛の
生えたような軍備しかできますまい。国民生活を昔の戦時中のようなうんと切り下げたも
のにでもしない限りは、共産圏三国に対抗し得る程の彪大な軍事費が出るわけがありませ
ん。
現在では、どう考えようと、米国と手を組んでの防衛でなければ、日本を護り切ってゆ
くことはできない状態であることが、こういう風に共産圏の軍備とくらべてみるとよくわ
かります。ソ連や中国に日本を攻めてくることはないなどという考えは、それこそ甘い考
えであって、今日の日本人の心の状態では、どこからでも敵は攻めこんでまいります。何
故ならば現在の日本人の心には、真剣に生命がけでの平和運動がないからです。自分たち
の心の中に常に不平不満や争いの想いを持ち、国のことより先ず自分のことだけを考え、
自分の生活を護ることに汲々としていて、国の運命のことなど、めったに考えない。とい
う人々や、国の運命や人類の行く先を考えて、心細くなるけれど、どうしたら、自分が国
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家や人類の平和のために役立つことができるか、ということを考えようともしないし、そ
のために働こうともしない、という怠惰な態度の人々では、とても心の世界でも、敵をよ
せつけないという状態ではありません。
まず自分の心の平和から始めよう
私が常に考え、実行していることは、先ず自己の心の中から、戦争になる原因の争いの
想いを無くすこと、すべてのものごとに対する不平不満を無くすことです。国家や世界の
在り方に対して種々の意見をもつということは、個人の不平不満とは違いますから、そう
いう意見や案は大いに持って結構ですが、常に心の中を世界人類の完全平和達成の想いで
一杯にしておくことが必要なのです。人間の想念や願いは、いつかは達成されるので、常
に多くの人々が、世界人類の完全平和を心で想っていれば、やがてはその想いが達成され
るのです。それを最も強く高めあげたのが世界人類が平和でありますようにからはじまる、
世界平和の祈りなのであります。
51日本政府と国民への進言
ただ、祈っていればそれでよいというのではなく、祈りを根抵にしての日常生活は、い
つの間にか、人々のためにも国家社会のためにもなる行為として動き出しているし、自分
の心が、いつの間にか、不平不満や争いの想いを超えた明るい気持になっている、という
工合に、自己の行動として外に現われてくるのです。祖国愛の気持も、人類愛の気持も、
世界平和の祈りをしているといつの間にか強くなってきて、ただ自己の日常生活だけに追
われている人とは全く違った、高い人格的雰囲気を持つようになってくるのです。
そういう、神との一体化の道こそ、安保問題や再軍備よりも、もっと根抵になければな
らぬ、日本人の心構えであって、いたずらに現象界の社会的動きに、心を惑わせていては
いけないのであります。
世界が平和でなければいけない、ということは頭では誰でもわかっているのですが、こ
れを理論としてではなく、実際につくり出してゆくのは、やはり完全平和の本質である、
神のみ心と一体になる道に、自分自らが入ってゆくことが第一です。そして、自分と国家
と人類とを一つに結びつけてゆくことが必要なのです。国家や人類を離れた、自分という
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個人がこの世に存在しているのではありません。自己は、人類の一員としての個人であり、
日本という国家の一員であって、たった一人の個人としては、生くるすべはないのです。
そういうように、この地球界の人間はできているのです。国家も人類も、一人一人の連帯
責任において存在しているのであって、国家の運命は政府の責任だけのものではないので
す。
そこで国家の運命は、国民一人一人の心構えにかかっているのでありますから、国民の
みずか
一人一人は、自らの責任において、国家の行く道をきめるべきなので、いたずらに右に走
り左に走るということは、厳にいましむべきなのであります。
政府首脳部への進言
現在の国際情勢では、どちらを向いても危険性のないことはありません。どちらを向い
ても危険性はあるのです。絶対に危険性のないことは、神のみ心の中に入りこんでしまう
ことだけです。神のみ心に世界平和の祈りによって入りこみながら、現実世界の動きに対
53日本政府と国民への進言
処してゆく、ということこそ、日本人一般国民のなすべきことであって、一部煽動家の煽
動に乗って、国内を二分三分せぬよう気をつけることです。外国にあなどられ、さげすま
れないためには、自己の立場をきちんと定めておいて、私共なら、祈りによる世界平和運
動という立場で、あくまで戦争やすべての争いを排除し、世界中を平和の祈り一本にする、
という立場を堅持してゆくことが大事なのです。
そういう立場が定まっていないと、常に想いが揺れ動いて、安心立命の生活ができ得ま
せん。ところが肝腎の政府首脳部は、この日本の確固たる立場を表面に出して発表したこ
とがありません。その時々の米国の動きに合わせて、それに同調する政策を取ったり、国
民輿論に上手に合わせて弁明したりするような、肚のすわらぬ政策ではなく、米国に対し
てもソ連中国に対しても、日本の立場はこれなんだ、と常に主張できる立場を、はっきり
持つことが急務だと思うのです。
自己弁明ではなく、真実に国民を納得させる心というものを、政府首脳部は、一日も早
くはっきりさせて置くことです。安保の問題しかり、沖縄問題しかり、ただいたずらに、
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その場限りの口当りのよいことをいうのは、ますます国民にあなどりを受けることになる
とあた
ことを知らねばなりません。常に生命を賭し、職を賭して政治に当れぬようでは、共産諸
国の指導者の冷笑を買うだけです。
平和憲法を変えぬなら変えぬように、日本は平和憲法を持つ唯一の国であることを、何
事にかけても表面に出して、米国とでもソ連とでも中国とでも話合って、その点にかけて
は一歩も退かぬ、という気位を持たねば、後の交渉全部がなめられてしまうことになりま
す。また平和憲法に変える個所があるなら、その変える個所をはっきり国民に明示して、
国民の輿論に問うてみたらいかがなのです。
何事も正邪善悪をはっきりさせて、枝葉の政治的な技術の面では、はっきりさせ得ぬこ
ともありましょうが、根本的なことははっきりさせ、信賞必罰の確固たる態度でゆくこと
によって、国民は政府を信頼するのであって、そこが不明朗ですと、左翼の煽動に乗りや
すくなってしまうのです。
自己の信念とすることが国民の反対に合ったら、いさぎよく首脳部の席を下りて、他の
55日本政府と国民への進言
ゆず
保守派の人に政権の座を譲ればよいのです。そういう首脳部の態度がつづけば、国民は保
守政権に対して大きな信頼をかけることになってくるのです。保守党の評判が極端に悪く
なって、国民が左翼化してゆくことが、日本にとっても世界にとっても、一番の悲劇であ
るのです。その点をよくよく考えられて、根本をしっかり、はっきりと政府首脳部は定め
てゆかれることが大事なのであります。
国民だとて馬鹿ではないのですから、どちらを取るかという瀬戸際になれば、保守派の
政策を取る人が多いと思います。ただその保守派の政策が、あまりにも米国の子分的であっ
たり、その場主義のものであったりすることがつづけば、次第に国民は保守政権から離れ
ていってしまうのです。ですからあまりにひとりよがりにならずに、常に真剣に神に祈り
を捧げ、世界の平和と、日本の平和と、自己の天命の達成されることを、毎日ひたすら願
いつつ政務を行なうように、首相はじめ大臣長官諸公が率先して、なられるよう祈らずに
はいられないのです。
世界人類が平和でありますように
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日本が平和でありますように
私たち(人々)の天命が完うされますように
守護霊様、守護神様(天津神、国津神)
ありがとうございます
合掌
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